純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

2024年上半期のもろもろのベストテン。

取り急ぎ2024年の上半期ベストです。今年も忙しいぞ!!夏は溜めてる本をガンガン読みたい所存です。過去に感想書いたものはリンクで繋げています。 #2024年上半期映画ベスト101.RHEINGOLD ラインゴールド2.悪は存在しない3.蛇の道4.チャレンジャーズ5.瞳を…

めちゃくちゃ笑えるラブゲーム『チャレンジャーズ』

ルカ・グァダニーノ監督、『サスペリア』は全然面白くなかったんだけど、お見それしました……「テニスとは何か?」という問いに「関係性よ」と即答するゼンデイヤ。もうこの時点で男の子二人は彼女には到底敵わないし、届かない存在だからこそもがき続ける。…

「暮らしの思想 佐藤真RETROSPECTIVE」で『エドワード・サイード OUT OF PLACE』『花子』『まひるのほし』を観てきました。

Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下で開催されていた「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」を観に行きました。4Kレストア版の三本を観ることができました。 佐藤真特集、1本目は『エドワード・サイード OUT OF PLACE』。パレスチナ人としてのサイード、佐藤真監…

そして蛇が生まれた。『蛇の道』(2024)

『蛇の道』(2024)、原点の『蛇の道』(1998)をソリッドに削ぎ落としつつ柴咲コウの役者の力を最大限に引き出すセルフリメイクの傑作。同じ物語を語り直すこと、舞台をフランスに置き直すことが禍々しさを増幅する。なぜこんな凄惨な物語が語り直されるのか?(…

人間になる?『ニンゲン合格』

ずっと主人公の声が西島秀俊っぽくて、そうなのか……?って最後まで確証持てなくてクレジットでうおおお!ってなった。調べてみたら西島秀俊の初主演作品だったのね。 黒沢清の『降霊』を初めて見た時に黒沢清ユニバースの二人が出会ってしまった!と驚いた記…

雪のふる旅 アスタリスク

旅先では本は読めない。旅の途中で本は読める。 いつだって物語は中断されてから再開されるものだからだ。二十分ちょっとでまた乗り換えなければならない列車の座席に腰を下ろし、数分かけて本を鞄から出すか出さないか決めあぐねる。頭の中では鞄の底から容…

世界は語り直される。『マッドマックス:フュリオサ』

『フュリオサ』、一夜たち、昨日の自分がウォー・タンクのシークエンスに興奮していたのが馬鹿らしくなるくらい、しみじみと良かったな……前作に比べて長く感じるのはそのように語られているからで、あの"ヒストリーマン"がジョージ・ミラー監督の前作『アラ…

神話は3から始まる。『マッドマックス サンダードーム』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

ずっと観れてなかったマッドマックス3こと『マッドマックス サンダードーム』をついに観た。いやー……見事。空中決闘場もといサンダードームの中に入ってからはアクションによって見せるのかと思いきや、そこで行われる取引と裏切り、マックスの選択、攻守の…

アンドリュー・スコットに吸い込まれる。Netflix『リプリー』

Netflixの『リプリー』を完走した。現時点で今年ベストドラマです。贅沢な時間だった。 原作はパトリシア・ハイスミスの『太陽がいっぱい』。とにかく主演のアンドリュー・スコットを観ているだけでも大満足なのに、イタリアを美しいモノクロ映像で取り上げ…

国立新美術館で徐冰監督の『とんぼの眼』を観てきました。

国立新美術館の企画展『遠距離現在 Universal / Remote』で鑑賞。この企画展自体なかなか楽しかったけど、この作品を観るだけでも元がとれると思った。監督……というか芸術家である徐冰(シュ・ビン)さんは40年近いキャリアでこれが初めての映像作品だとか。 …

5回目と1回目。『牯嶺街少年殺人事件』『ヤンヤン 夏の思い出』

『牯嶺街少年殺人事件』デジタル・リマスター版 早稲田松竹で久しぶりに観た。 2017年に4Kレストア・デジタルリマスター版が公開されてから、幾度となく再公開のたびに足を運んで、今回は5回目。消えない魔力をずっと感じているし、新しく見えてくるものも、…

文学フリマ東京38に参加してきました!

大學の研究会のまだやりたりない人たちで立ち上げた掌編小説読書會、文フリに参加するのはこれで四回目なんですが、去年は自分が売る側であまり出られなかったり、欲しい本が根こそぎ売り切れてたりしたので、今回はリベンジのような気持ちでフル出場できて…

5/19の文学フリマ東京38に出店します!

告知がギリギリになってしまいましたが、今週末5/19の文学フリマ東京38に出店します! ブースは「ち-43」です。今回は作品を出せる同人が少なかったため、僕が小説もエッセイも映画評も書いているのでこれまでの冊子よりちょっと照れくさいところがあります…

圧倒的なものに触れる。『悪は存在しない』

悪は存在しない、映画の言語化不可能性を存分に味わえる映画だった。すべてのショットと台詞がラストに結実していく。最後の森を人々が(まるで葬列のように何かを受け入れながら)歩いている場面で自分の脳裏にずっと「20年に一度の山火事が、10年に一度、5年…

時間蠅たちは、矢がお好き

多和田葉子の小説が好きだ。 去年は四冊くらい読んだのだが、急にもったいない精神が発動して今年は読んでいなかった。しかし去年多和田葉子はいいぞと散々勧めていた友人から勧めていたのとは別の(多和田葉子の)本を読み始めたよ! と連絡がきてなんだかモ…

ターセルス・ミルーリア・ダ・パーゴ……『王様戦隊キングオージャー』

『王様戦隊キングオージャー』、完走してしまったよ……去年のドンブラザーズから戦隊見始めた者としては超王道のエモさとアツさの塊みたいな作劇に並走していくような50話だった。日本の特撮ドラマで本当にMCUのエンドゲームみたいな終盤の決戦を作り上げたこ…

世界を滅ぼす確率に目を瞑る。『オッペンハイマー』

やっと観に行くことができた。観る前はかなり緊張していて、原爆を扱った映画としてもノーランのファンとしても不安だったのだけれど、観てしまったのちはむしろ興奮は少なく、どこかオッペンハイマーの虚無と絶望が伝わってきたような凪いだ気持ちになった。…

今この世界に必要な二作。『RHEINGOLD ラインゴールド』『美と殺戮のすべて』

今週末は立て続けにすごい映画を2本も観てしまった。自分が最近考えていて、勉強していたこととどんどん繋がっていくし、どれも現代日本の問題と切り離せない。一方で、エンターテイメント作品としての完成度も凄まじい『RHEINGOLD ラインゴールド』は現時点…

ダンジョンに食べられる。九井諒子『ダンジョン飯』

『ダンジョン飯』、とうとう読み終わってしまった。『鋼の錬金術師』や『宝石の国』に匹敵する名作といえば伝わるだろうか。そしてこの作品を読む前の自分はそんなことは全く思っていなかった。タイトルの軽さに惑わされていて、「ダンジョン」で「飯」を食…

憧れのアピチャッポン監督のVR作品とトークを聞いてきました。

日本科学未来館でアピチャッポン・ウィーラセタクンのVR作品『太陽との対話』を体験してきた。 まず最初に見せられる断片的な映像群が紛れもなくアピチャッポンの撮ったバキバキにカッコいいショットだらけで感動した。年末年始にクィア・シネマの講座を受け…

難民問題SFゲームとして。『Citizen Sleeper』

『シチズン・スリーパー』、クリアした。『サイバーパンク2077』みたいな硬派な改造人間SFを『ディスコ・エリジウム』ライクの膨大なテキストで読めるという至福の15時間(106サイクル)。難民船団が到着してそれを受け入れるかを問うDLCが骨太すぎて、そこの…

縮こまった肉体に隠された欲望。『Saltburn』

今年観た中で最もエキサイティングで最も面白い……お手本のようなパリー・コーガンの使い方。2時間を通して熱が迸っていくようだった。ロザムンド・パイク繋がりで『ゴーン・ガール』くらい面白いと言えば伝わるだろうか。 バリー・コーガンはもちろん演技や…

観るものの視線も改造する映画『哀れなるものたち』

ヨルゴス・ランティモス監督作品は好きかどうかは別としてどんどんやってくれ!という気持ちになる。 女性の身体についての細かい言及(男達からまなざされる身体でもあるが......しかし)が多く、観ていて『バービー』を強く思い出した(ダンスバトルのシー…

映画はどこからやってくるのか?『瞳をとじて』

映画を観ていて、奇跡というものはこのように起きるのかと感じたのは生まれて初めてだった。生涯でこんな映画体験をすることができるとは。前半こそ、このテンポで169分いくのか……と思って観ていたが鮮烈という他ない「海」が飛び込んできて(あのゴールポス…

記憶を再生する。『ミツバチのささやき』

ビクトル・エリセ監督が31年ぶりに新作を撮ったというので、その前に見返しておこうと思って観た……のだが、映画を観ることは記憶を失ない、忘れていたことを発見することだという体験にまたしても愕然とした(映画と記憶の話は『牯嶺街少年殺人事件』のパンフ…

母語を失うこと。岩城けい『さようなら、オレンジ』

岩城けいさんの『さようなら、オレンジ』を読みました。難民の、移民の、女性たちの、オルタナティヴなファミリーの可能性を描いた一冊。途中からぼろぼろ泣いてしまった。しかし、この物語だって涙で始まり、誰かの涙によって自分の中の心を発見していくの…

女二人でぴょんぴょん跳ねる。『麦秋』

久々に小津の『麦秋』を観たが、こんなに面白かったっけ……もともと好きだけどちょっとびっくりするほどずっと面白い。小津映画はマジでスルメというか、この前東京国際映画祭で久しぶりに観た『お早よう』とかも信じられないほど面白くてず〜っと笑顔になっ…

深海探索SFにしてAIと研究者のバディものでもある。『In Other Waters』

『In Other Waters』クリア。『サブノーティカ』を彷彿とする異星海底探索ゲームだが、その画面の飛び抜けた地味さをどんどん覆す設定と語りの妙!プレイヤーはあくまでかつての親友を探す女性研究者のサポートAIである……という設定から観測者と創造者を巡る…

結婚報告に「おめでとう」と言わない。『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ ——性と身体をめぐるクィアな対話』

森山至貴さんと能町みね子さんの『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ ——性と身体をめぐるクィアな対話』を読みました。いやぁ痛快!そして勉強になる。というか、やっぱり「勉強」の中にあまり入らなかった話をたくさん聞くことができる。 たとえば、森山さんが…

恐怖と魅力の深淵『メトロイド ドレッド』

『メトロイド ドレッド』、去年Switchを購入してから一番のめり込んでいる。ダークソウルに通じるような「彷徨う」快楽が素晴らしい。それもどうしたらいいかわからなくてウロウロしているのではなくて、「恐いけどこっちに行けば何かが見つかりそうな気がす…