純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

『ベター・コール・ソウル』が終わってしまった。(ネタバレあり)

14年間の現実が終わってしまった。自分がこの物語を追っていたのは3年間ほどだけど、この時が来るのを心待ちにしていたし、やっぱり終わりを観るのは怖かった。しかしあまりにも素晴らしい幕引きに言葉もない。特にこの最終シーズンは冒頭数話でナチョの最期を見届けさせ、ガス帝国が出来上がる最後のピースであるラロとの果し合いを西部劇のような激情と恐怖の筆致で描き上げたあとの6話が凄まじい。キムとジミーは僕にとって永遠の二人です。あの最後の6話を見届けた数週間の緊張、恍惚は一生ものだと思う。見届けられてよかった。

(とか言いつつ7話のハワードの最期は見終わった今になってもトラウマというか、見返すのが恐い。あの場面で空けられた第8話が放送されるまでの一ヶ月半のなんと苦しかったことか。『ブレイキング・バッド』からそうだけど、永遠に消えない傷を観客に残していくシリーズだ。)

一気にラストシーンの話に飛んでしまうのだけれど、やっぱり最後のジミーのバン、バン、という仕草を受けたキムの表情、身体、手つきにこの物語の全てが込められていたと思う。僕はキムが撃ち返さなくてよかったと思うし、それでもその仕草を受け止めることのできる、言ってしまえば弁護士としての魂を取り戻した彼女を見ることができた、その感動がすごい。そしてそれで終わらない、あの古典的な、王道的なラストショットの完璧さ!いうのも野暮だけど『ゴッドファーザー PART II』のような、『アイリッシュマン』のラストショットのような、しかしそれを超えていくだろう86年?の二人の未来を思わせるラストショットだった。だって彼は世界で二番目の弁護士なのだから。残酷だけど最後の最後まで美しい物語を本当にありがとう。