純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

国岡どうでしょう。『グリーンバレット 最強殺し屋伝説国岡[合宿編]』『最強殺し屋伝説国岡 外伝 国岡ツアーズ大阪編 蘇る金のドラゴン なにわアサシンの逆襲』

 阪元監督作品は『ベイビーわるきゅーれ』が面白かったものの『黄龍の村』にノレなかったこともあって未だに相性が微妙なところがあったのだが、この国岡シリーズだけは別格。思うに、『ベイビーわるきゅーれ』の二人の美少女に銃を持たせたり漫画的な台詞を言わせる気恥ずかしさや『黄龍の村』の奥があるようでないオカルト描写の食い合わせが悪かったのだと思う。

 今作『グリーンバレット』ではミスマガジンの新人女優6人を主演に据えたことでむしろそれを捉える阪元カメラマンや教官国岡の視点が固定されて見やすくなったのだと思う。ポンコツ殺し屋ボーイズたちが女の子たちをサポートする構図は「林間学校」の台詞の通りどこか教育的で、癒しの場でもあった。その分アクションパートは薄味というか、敵側の殺し屋の個性は前作よりも弱い。ここの「キャラの弱さ」は直前に白石監督の『オカルトの森』を観ていたのでより強く感じてしまった。

 しかしそれを補ってあまりある新キャラがカメラ補佐の大坂くん。まーたテンプレ的な嫌味なやつかと思ったら謎の上から目線で国岡達に点数をつける饒舌が次第に絆され、国岡の人間性(だと思う)に感銘を受けていく姿は完全にギャグなのに感動的だった。大阪くんの成長物語じゃん。間違いなく今作で一番面白いのは合宿の夜に毎回強制開催される大阪反省会とツッコミを入れ続ける国岡のやりとり(癒し担当真中もいる)。たまたまトーク付きの上映だったが、本当は阪元監督も交えて四人で語り合う予定が笑いが堪えきれないのでカメラの後ろに逃げたという裏話を聞けて納得した。完全に『水曜どうでしょう』の領域に踏み込んでいる。このままやってくれ。

 

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 『国岡ツアーズ大阪編』は『グリーンバレット』の後日談。

 『グリーンバレット』を観た友人がそのままBlu-rayを購入していたので友人宅で観た。もう完全に『水曜どうでしょう』です、ありがとうございます。『グリーンバレット』上映後のトークで男子チームの帰路の車内で国岡、真中、阪元カメラマン相手に板尾創路が40分ボケ続けた(本編未収録)という話があったのだが、その空気感を心ゆくまで楽しめるボーナストラックとも言える70分。個人的には『グリーンバレット』本編よりも好きです。チラッと殺丸の名前とかも出てきて嬉しい。

 トークでは白石監督のフェイクドキュメンタリー愛には叶わないと言っていたが、国岡シリーズで阪元監督が繰り返し描く虚実の間、台本とアドリブが渾然一体となっていくドライブ感は唯一無二のものになっている。もう熱狂してます。国岡シリーズのレギュラー四人組が完成した瞬間に立ち会えたような気すらしている。

追記

 国岡役の伊能くんが自身のnoteでフィクション内フィクションである「国岡日記」を更新していた。今日はじめて本人を見たけどあまりに誠実な人柄が滲んでいて、ずっと応援しようと思った。