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黒沢清が時代劇を撮るとこうなる『黒牢城』

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黒沢清版『黒牢城』ファーストインプレッション、そりゃあ楽しかったんですが、原作を(間に合わなくて2/3くらい)読んでから行った身としてはその演出のギャップに身体がびっくりしてしまって……特に前半とか、原作では荒木村重があの手この手で怪異を解き明かそうとしてそれが成せず、仕方なく黒田官兵衛のいる地下牢へ続く階段を降りることになる……という流れが今作では異様にテンポ良く官兵衛と村重が仲良くなっていく。まぁ正直地下牢が映った時点で「あまりに『蛇の道』すぎる!!」と思ったし村重と官兵衛の信頼と毒が入り混じった関係性とかも、たしかに考えてみれば『蜘蛛の瞳』や『復讐』二部作の男同士の奇妙な関係に重なる気がして、やっぱり面白いな……と思うのだがそれにしても困惑が強かった。

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「夜討ちは静謐をもってよしとする。馬はいななくので用いない。鎧が擦れると音を立てるので、腿を守る草摺を巻き上げ、紐でくくる。鉄炮を持つ者もいるが、火縄は目立つので隠し持つ。」米澤穂信『黒牢城』より

一緒に観た原作未読の友人(黒沢清ファン)が「面白かった〜!」と言っていて安心したのだが、それはそれとして原作の緻密かつスリリングな「夜討ち」シーンがあんな風にシュールな風景に料理されてしまうとそりゃあびっくりもするよ。その後の村重が不意に襲われる場面も原作だと「鉄炮が放たれ矢が射られ、硝煙が風になびくが、手練れ揃いの荒木御前衆がこの時ばかりは不思議に的を外した。」のような緊張感に満ちた描写で畳み掛けてくるので、黒沢清らしいのたのたしたアクションで人が死ぬ(なかなか死なない)というのは不思議なことが起きているように見える。いやこれが良いってのもよくわかるんだけどね。『ゼイリブ』のプロレスシーンみたいな。あっでも首実験のシーンのぞんざいさみたいのは戦の後のくたびれた感じと仕事感とでもその時の不注意が更なる問題の呼び水になっちゃう感じとか、白々しい朝の光の印象も強くてこれは映画版の方が好きな場面かも。その後の「えっ?敵将討ち取ってたの??」となって村重たちが走って移動するシーンとかも最高。あとはやっぱり吉高由里子演じる千代保との最後のシーン、あんな怖いシーンが突然くるとは思ってなかった。

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いや結局邦画ファンにとっては異常な豪華キャストに見えるこの作品(家臣の顔を全員知っている不思議さ)、個人的には北野武の『首』とか大島渚の『御法度』みたいな異色傑作時代劇という感じで大満足ではあるんですよ。オダギリジョーとか異様にかっこいいし、青木崇高の絶妙な間の抜けた感じとか。特に第一章に当たる「冬 自念」の容疑者たちが近年のホラー映画の顔役が揃っている感じで凄かった……『chime』の吉岡睦雄と『8番出口』の河内大和が続けて出てくるとかワクワクし過ぎてしまう。ラストシーン、ずっとそばにいた仲間がそれぞれ有岡城に帰っていくのを見届けて「黒牢城」(という物語)から去っていく荒木村重、なんだか市川崑の『股旅』を思い出すような青春の終わりと人生の始まりを思わせるショットで終わっていて、すごい不思議な読後感だったな。うーん、やっぱり自分はこの映画かなり好きなのかもしれない。原作全部読んでもう一回観に行きます。

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 映画『黒牢城』|大ヒット上映中