純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

縮こまった肉体に隠された欲望。『Saltburn』

今年観た中で最もエキサイティングで最も面白い……お手本のようなパリー・コーガンの使い方。2時間を通して熱が迸っていくようだった。ロザムンド・パイク繋がりで『ゴーン・ガール』くらい面白いと言えば伝わるだろうか。 バリー・コーガンはもちろん演技や…

観るものの視線も改造する映画『哀れなるものたち』

ヨルゴス・ランティモス監督作品は好きかどうかは別としてどんどんやってくれ!という気持ちになる。 女性の身体についての細かい言及(男達からまなざされる身体でもあるが......しかし)が多く、観ていて『バービー』を強く思い出した(ダンスバトルのシー…

映画はどこからやってくるのか?『瞳をとじて』

映画を観ていて、奇跡というものはこのように起きるのかと感じたのは生まれて初めてだった。生涯でこんな映画体験をすることができるとは。前半こそ、このテンポで169分いくのか……と思って観ていたが鮮烈という他ない「海」が飛び込んできて(あのゴールポス…

記憶を再生する。『ミツバチのささやき』

ビクトル・エリセ監督が31年ぶりに新作を撮ったというので、その前に見返しておこうと思って観た……のだが、映画を観ることは記憶を失ない、忘れていたことを発見することだという体験にまたしても愕然とした(映画と記憶の話は『牯嶺街少年殺人事件』のパンフ…

母語を失うこと。岩城けい『さようなら、オレンジ』

岩城けいさんの『さようなら、オレンジ』を読みました。難民の、移民の、女性たちの、オルタナティヴなファミリーの可能性を描いた一冊。途中からぼろぼろ泣いてしまった。しかし、この物語だって涙で始まり、誰かの涙によって自分の中の心を発見していくの…

女二人でぴょんぴょん跳ねる。『麦秋』

久々に小津の『麦秋』を観たが、こんなに面白かったっけ……もともと好きだけどちょっとびっくりするほどずっと面白い。小津映画はマジでスルメというか、この前東京国際映画祭で久しぶりに観た『お早よう』とかも信じられないほど面白くてず〜っと笑顔になっ…

深海探索SFにしてAIと研究者のバディものでもある。『In Other Waters』

『In Other Waters』クリア。『サブノーティカ』を彷彿とする異星海底探索ゲームだが、その画面の飛び抜けた地味さをどんどん覆す設定と語りの妙!プレイヤーはあくまでかつての親友を探す女性研究者のサポートAIである……という設定から観測者と創造者を巡る…

結婚報告に「おめでとう」と言わない。『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ ——性と身体をめぐるクィアな対話』

森山至貴さんと能町みね子さんの『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ ——性と身体をめぐるクィアな対話』を読みました。いやぁ痛快!そして勉強になる。というか、やっぱり「勉強」の中にあまり入らなかった話をたくさん聞くことができる。 たとえば、森山さんが…