純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

過去そのもののアイツ『佐々木、イン、マイマイン』

新宿武蔵野館で映画を見るたびに、予告編の「佐々木!佐々木!佐々木!」コールと全裸踊りを見させられて、正直辟易していたが、食わず嫌いをせずに済んでよかった。大傑作。ここまで自分に刺さってしまった青春映画は『桐島』以来かもしれない。 見ていて自…

8時間26分の一瞬『死霊魂』

8時間26分、最初は尻込みしたが、観ていくうちにだんだんと映画の語りの速度に浸透/信用してゆき、「何があったのか」に少しでも近づきたいのなら、ドキュメンタリーというものは本来こうした語りの時間を持っているべきなんじゃないのか?とすら思えてくる…

小説にすることと生きること『江分利満氏の優雅な生活』

Netflixで『斬る』に続けて観たが、まさかこんな一見ゆるゆるなコメディが自分の最も愛する岡本喜八映画になるとは。ストップモーションとかミュージカルのような演出とか、お洒落で斬新なところも目を引くけれど、何よりこのショートショートのようなストー…

恋をして気分が悪い『マグノリア』

「恋をして気分が悪い」「その二つを混同するのか?」「そのとおり、やっと正しいことを言った!おれはその二つを混同する」 1999年の作品ではあるが、「有害な男らしさ」をこれでもかと描いている。社会的に追い込まれていくゲイの男性、警察官としてしか生…

黙示録のオリンピック『ジャッリカットゥ 牛の怒り』

たまたまオリンピック開会式の日のレイトショーで観たので、上映後友人二人と映画館を後にしながら「……俺たちのオリンピックが始まったな。」と不思議な感慨に浸った。冒頭と末尾に黙示録が引用されるように、インドの端っこにあるキリスト教徒の割合がとて…

もう十分救ってもらった。『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』

想像以上に沈鬱な、どこか祈りのような映画だったが、それ故に、ある意味ものすごく救いがないようにも取れるラストの「救済」感というか、この映画がフィクションであるがゆえに、それだからこそ、この中の物語でオチをつけて終わらせたくはないというよう…