純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

一人でも多くの瞳を。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

ラスト、80歳のマーティン・スコセッシ監督の瞳にデヴィッド・バーンと同じ怒りを観た。歴史について考えている人にはぜひ観てほしい作品。こんな映画を観ることができたことに、今はただ感謝の気持ちで一杯です。原作読んでもう一回観に行きたい。 今年はス…

ねこまち、中華街行き

プラスチックの、温かくもなく冷たくもない人工的な窪みに頭を傾け、転がし、定位置を探す。地下鉄の長い座席の端っこを陣取り、頭がほのかに固定されると、自動的に身体がその滑らかなへこみに馴染んでいく。この時、壁に対して身体は車両の進行方向になけ…

渡辺謙と爆弾のかわいさ対決。『ザ・クリエイター/創造者』

久々に超ストレートなSF大作が観れると思い、朝イチのグラシネIMAXで観た。話はわりとアホっぽかったりAKIRA過ぎたりはするけど、期待してたシモン・ストーレンハーグ的なSF世界の構築は余す所なく観れたので大満足。AIと共存するニューアジアの方がメカはダ…

カメラはどこにあるのか。『モンスターズ/地球外生命体』

モンスター襲来から6年後という設定が同じく低予算SF映画『第9地区』を思わせる。地球外生命体が武力によって隔離されているというのも通じるところがあるし、合わせ鏡のように観ても面白いかも。そう考えると両監督がいまこのタイミングでストレートなSFエ…

最高の階段。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

何よりもまず忘れられないのは後半に登場する建物内での『ホットライン・マイアミ』完全再現ワンカット。ジョン・ウィックが二階に上がる(ステージに入る)階段の隅に隠れるところからゆっくりと浮き上がるカメラがやがて天井を超えた俯瞰視点に到達する。良…

太宰治の「右大臣実朝」を読んで、実朝の墓参りをしました。

太宰治全集〈6〉 (ちくま文庫) 作者:太宰 治 筑摩書房 Amazon 結局鎌倉旅行には全然間に合わなかったけど、太宰治の「右大臣実朝」を読みました。いやー面白いです。最初はなんで太宰が実朝を?という気持ちだったのだけれど、読んでるうちに太宰治特有の「…

韓国映画の到達点。『HUNT』

この映画に全てがある。 この映画のために自分は韓国映画を観てきたのだと思った。昨日の夜に『1987、ある闘いの真実』を観ていたのもとてもよかった。今年これを超える映画はないだろうと思う。 イ・ジョンジェを知ったのは『イカゲーム』からであり、そこ…

キム・テリの視線の先に。『1987、ある闘いの真実』

女の子のパートが異常にいい。「それで世界が変わるの?」 デモに行く友人を心配する大学生の心情が、恋愛や青春よりも不安に押しつぶされている日常が伝わってくる。独裁政権は実際にソウル大の学生を拷問して殺してしまったが、それと同時に日常を生きる人…

あまりにチルすぎて泣いてしまう。『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』

めちゃくちゃクィアでストリートでサイバーパンク!アクションシーンがチル過ぎて最高。音楽ネタ多くて、みんなでBTS口ずさむところとかジンときちゃったな。そしてもちろん最高にNINJA!巨大な敵にスケボーで立ち向かう辺りからずっと泣いてた。 エンドロー…

氷の世界に揺蕩う。『バーナデット ママは行方不明』

もしかしたらリンクレイター監督作品で一番好きかもしれない。メンタルヘルスと家族(そして建築!)の話だと思っていたが、あの土砂降りを機に映画がどんどん未開の大地へと転がっていく。間違いなく人生で一番好きな南極映画。小学生の頃の将来の夢が南極に…

ベルリンに響き渡る破裂音。『アル中女の肖像』

ユーロスペースの「ウルリケ・オッティンガー ベルリン三部作」特集上映で観た。今年一番すごい映画かもしれない。ていうか酒に酔ったことがある人は全員観てくれ(たぶんもう上映は終わってるけど……)。個人的に忙しい期間でこの一本しか観れなかったことを強…

言葉は風に吹き散らされて。阿部共実『潮が舞い子が舞い』

ついに、阿部共実『潮が舞い子が舞い』を読み終わった。心に突き刺さるものを見てしまった罪悪感が散りばめられたような最終巻だった。それはファミレスに置き忘れられた同級生のノートだったり銭湯あがりの「夜の私服女子」だったりするが、二人乗りの水木…