純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

2022-01-01から1年間の記事一覧

今年のいろいろなベストテン。

今年は意識的に美術館、博物館に足を運ぶようにした一年だった。夏に自動車免許の合宿で福岡に行って、その休日にたまたま観に行った北九州市立美術館、めちゃくちゃカッコいい建物だなぁと思っていたけれど、先日亡くなった磯崎新さんの設計だったんですね…

プレイすると時間が経つ。『ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット』

なぜ自分はこんなに『ディスコ エリジウム』にハマったのだろうと考えてみると、これが紛れもなく書かれた言葉による書かれた言葉のためのゲームだからだと思う。『ハリーポッター』全7巻を超えるテクスト量とかそういう事ではなくて、物語を進めることより…

Running on Karma『マッスルモンク』

中盤まではゲラゲラ笑いながら楽しく観ていたのだが、終盤の転調と主人公の運命、映画全体のテーマの提示があまりにも重くて、物凄い読後感だった。何も言えなくなってしまうような。何しろ英題は『Running on Karma』なのだ。 前半は肉襦袢を着たアンディ・…

どこへ行く?今年ベストの一本『エグザイル/絆』

2022年はパゾリーニとジョニー・トーに出会った年だった。いやマジで、今年のベスト旧作は『王女メディア』と『エグザイル/絆』のどちらかになると思う。映画の神が宿っているとしか思えないし、一方で神様に叛逆するような作品でもある。観た順番のせいだけ…

死に向かって飛べ。『キャシアン・アンドー』

もう、スター・ウォーズ史上最高傑作と言っていいと思う。長編ドラマであること(後半シーズンは2年後)、スピンオフ作品のさらなる前日譚であること、主人公格が複数人いるような群像劇であること、全てが有機的に組み合わさって凄まじいカタルシスをもたらし…

読んでいる僕はどこにいる?熊倉献『ブランクスペース』

熊倉献『ブランクスペース』最終3巻読み終わった。とっても満足いくラスト。現実の暴力に苦しむ彼女が生み出してしまった「空白」がやがて誰のものでもない物語になっていく。素晴らしいのはその見せ方で、僕らは「空白」に意味を見つけ出してしまうし人によ…

小説(他世界)との幸福な関係。『ファンタジスタドール』

野崎まどの前日譚小説『ファンタジスタドール イヴ』を先に読んでからアニメ本編を観るというちょっとズレた入り方をした。小説は屈折した青年が大学生活でどんどん歪んでいく反=青春小説かと思いきや、後半はどんどん<質量傾斜実験>にドライブしていく濃厚…

ボーイミーツガールミーツ震災。『すずめの戸締まり』

いままでの新海作品で最も災害と真摯に向き合った作品だと思った。えらそうな事を言えば、作家としての成熟や覚悟を感じた。映画を観ていて途中まではすずめ「が」戸締まりしなきゃいけない話だけど、すずめ「の」戸締まりじゃなくない?と思ったら最後にす…

傷が容易に閉じないことの誠実さ。『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

とりあえずエムバク最高!前作にモヤモヤした人なので、王国の傷を開いていくような物語は予想外でゾクゾクした。キルモンガーについてのやり取りもやっと納得できた。でも終盤のアクションはあれなんとかならなかったのかな……中盤のチェイスシーンとか最高…

高橋洋の最高傑作?『ザ・ミソジニー』

昨日は友人と『ザ・ミソジニー』を観たんですが、今年の夏の心霊体験はこれ一本観ておけばいいんじゃないかと思う。物語は何一つ理解できなかったけど(エルデンリングくらい難解)もう最初っから霊気が満ちていて後半の召喚儀式に至るまで一切のダレ場なし。…

ナイトシティは返ってくる。『サイバーパンク:エッジランナーズ』

まさかここまで無情な結末を見せつけられるとは。たしかにゲーム本編もどのルートを選んでも失うものの大きさに驚かされたが、蛍光色でクールでバイオレントなこの物語もまた、同じ寂寞感をもたらしてくれた。これこそがサイバーパンク体験なのだと思う。Vも…

俳優たちの王国『ナルコの神』

全キャラ、全役者あまりにも魅力的。どの方向向いても名優がいるし、この物語のど真ん中の玉座に座って動かないファン・ジョンミン神父様は最高の笑顔でこっち向かせようたしてくる。話としては韓国を捨てて南米スリナムで王国を作ろうとしている男に出会っ…

国岡どうでしょう。『グリーンバレット 最強殺し屋伝説国岡[合宿編]』『最強殺し屋伝説国岡 外伝 国岡ツアーズ大阪編 蘇る金のドラゴン なにわアサシンの逆襲』

阪元監督作品は『ベイビーわるきゅーれ』が面白かったものの『黄龍の村』にノレなかったこともあって未だに相性が微妙なところがあったのだが、この国岡シリーズだけは別格。思うに、『ベイビーわるきゅーれ』の二人の美少女に銃を持たせたり漫画的な台詞を…

老船長はフィルムカメラを回す『NOPE』

ぶっちぎりで今年のベスト映画体験。池袋グランドシネマサンシャインのIMAXレーザーGTで観たが、これまで観てきたどのIMAXよりも素晴らしかった。ノーラン作品(今作も撮影監督はホイテマ!)やトップガンも映像体験として凄かったと思うけど、何よりも今作は…

『ベター・コール・ソウル』が終わってしまった。(ネタバレあり)

14年間の現実が終わってしまった。自分がこの物語を追っていたのは3年間ほどだけど、この時が来るのを心待ちにしていたし、やっぱり終わりを観るのは怖かった。しかしあまりにも素晴らしい幕引きに言葉もない。特にこの最終シーズンは冒頭数話でナチョの最期…

恐怖と嫌悪の旅もここまで。『ラスベガスをやっつけろ』

60年代にサヨナラを!というヒッピーカルチャー狂い咲き(要するにドラッグ)映画なのだと思うが、テリー・ギリアムのゴテゴテ面白画面がふとした時に本当に映画全体がシラフになったような雰囲気を漂わせてドキッとする。多分これはカメレオン俳優ジョニー・…

眠っている間に何かが起きた『たぶん悪魔が』

核軍備と環境問題の議論の後で、青年二人が乗るバスの停車時のカットがすごい。吊り革と靴と手摺とが連続して切り替えられてただバスが停車して人間たちが乗り降りするのにそれが騒々しいシステムのもつれ合いのように彼らには感じられているのだろうか。 い…

オバケなんてないさ。『こちらあみ子』

一晩経って、『こちらあみ子』がどんどん大切な映画になる。子どもの頃観た記憶が朧げにある大林宣彦の『マヌケ先生』とか大学生の頃の小津の『生れてはみたけれど』とかトリュフォーの『大人は判ってくれない』とか、子どもがそのままその世界にいることを…

几帳面な悪魔『ライトハウス』

悪魔的な精密さで作られた、地獄へようこそ。パンフレットでロバート・エガース監督と『ヘレディタリー』のアリ・アスター監督による対談があったが、まさしく全てが計算されているような構造はアリ・アスター監督の『ヘレディタリー』『ミッドサマー』を思…

ピクシーズが流れたらそれはもう青春『ザ・スーサイド・スクワッド』

人生最高のイドリス・エルバでした。この映画を観ても僕はやっぱりDCEU最高傑作は『シャザム!』だと思ってますが、今作はむしろヒーロー映画最高傑作かもしれない。「ヒーローになる瞬間」を描いた作品は数多あると思うが(大いなる力には大いなる責任が伴…

ひとつの完全な解答『ムーンナイト』

『ムーンナイト』最終話。僕らにとっての「スーパーパワー」とは一体何なのか、ひとつの完全なる解答にただただ泣く。神様繋がりではないけれど『グッド・オーメンズ』みたいな「かけがえのないあいつ」の話だ。MCU版遊戯王かもしれない。最後の大オチも非道…

森で目覚めた。『シン・ウルトラマン』

うーん……数時間前に観たけど、すごく楽しかった一方で、やっぱり落ち込んでしまう。斎藤工と山本耕史と「M八七」はほんっっっっっとに良かった。デザインワークス売り切れてたからどこかに買いに行かなきゃ。でもなぁ……とてつもなく美しい画面も沢山あった。…