純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

この本があることがSFである。『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン: 実績・省察・評価・総括』

 昨日は株式会社カラー『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン: 実績・省察・評価・総括』を読みました。結構厚いなーと思っていたのにどこかSF作品世界の内部文書を読んでいるような奇妙なフィクション感があり(内容は極めてデータ主義の事実の評価で構成されているのだが)、グイグイ読めてしまった。

 読んでいて「エヴァンゲリオン完結計画」の内実が様々な面から語られているのだが、この内部の証言を集めていくほどに株式会社カラーの、そして庵野秀明を構成する「外部」が見えてくるというのが逆説的で面白い。「東宝東映・カラーの三社強度配給」や延期の末の「月曜日公開」がどれほど異常なことだったのか。「東宝東映が手を組むことはこれまでも、これからもないでしょう」といういくつかの証言にこのプロジェクトの前代未聞さを感じて震える。尾上克郎さんの「二つの『特撮』がある」という話(「カラーの技術はすでに最高レベルにあると言っていいでしょう。」)や、鈴木敏夫のどこを切っても面白い圧倒的な語り(宮崎駿から庵野秀明を縦横無尽に語るもはやアニメ漫談)は面白すぎてヒイヒイ言いながら読んだ。最後に庵野秀明への「総括とは何か」という質問群が現れる構成も圧巻。AIについて聞かれた庵野が「三幕構成も機能としては生成系AIのようなものです。」と答えるのには笑ってしまった。

 あと、庵野秀明の少しでも素材になる可能性があればそれを収集し、共有したいという感覚(欲望)はよくわかる気がした。自分も四六時中やたらに写真撮るけどそれはもう「いい写真」を撮りたいとかではなくて、「可能性」を少しでも拾いたいみたいな感覚になってることがある。アーカイブの執念なのかな。庵野秀明が「やっぱり日本で強いのはアニメ・漫画・ゲームですね。」と言っていたけれど、これをKOJIMA PRODUCTIONやFROMSOFTWARE のような日本の独立系ゲームスタジオでも読んでみたい。どちらも異常なクオリティのSF作品を作ってきた会社なので。『プロジェクト・デス・ストランディング』とかさ。