眠れないのでいしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』を読んだ。止まらなくなって一気読みした。もう眠れない。いしいひさいちのいつものゆるゆるギャグ四コマで進んでいく二人の女子高生の日常がどんどん飛躍し、離れ離れになり、ラストの切なさはもう……これを百合とでも呼ぶのだろうか。
『ROCA』、ポルトガルの国民歌謡「ファド」を題材にした音楽漫画としてもう抜群に面白いのだが、この切なさにキュッと心臓を掴まれる感じ……描かれていないことが四コマの外に勝手にどんどん広がって見えてきてしまうような体験。達人の斬れ味とはこういうものをいうのだろうか。大傑作です。
成田空港からの帰りの電車で、いしいひさいち『花の雨が降る ROCAエピソード集』を読みました。本編のラストに色々な感情を奪われていたので、もう貪るように。美乃さんの話が多くて嬉しかった。あとがきを読むと作者もまた読者と同じようにロカを忘れられずまた描いてしまったような気すらする。
そして内容には触れないけれど、この本のラストシーンは……本編の空白を埋めるようでいて、それがもっともっと大きな隙間となって現れる。本編のあの壮絶な切なさの後で読者をさらに突き放すあんなショットを見せられるなんて。喩えるなら『ベター・コール・ソウル』みたいなとんでもない続編だった。