純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

辺境のやさしい二人。『ファースト・カウ』

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 一昨年の年末の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』や『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』へと繋がっていくアメリカの歴史、に取りこぼされた男たちの物語。前評判を裏切らず、とても素晴らしい映画だったと思う。最近受講してた「クィア・シネマ」の講座でゲイなどのクィアなカルチャーにも都市/地方の格差があって、地方で生きるクィアな人々は描かれることが少なかったという指摘があり、この映画は静かに、しかし力強く地方どころか未開拓の土地で生きて死んでいった二人を描いている。

 後半の「牛」をめぐるあれこれは見ていて非常に恐ろしかった。いやもちろんホラーではなくて、ただこの二人がひどい目に遭って欲しくない……という一念で画面を凝視していた。本当にいい映画だと思った。

 主演の二人はもうずっといいなぁと思って観ていたのだけれど、助演のキャストも本当に良かった。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のリリー・グラッドストーンのあの笑い声がまた聞けたのもグッときたけど、何よりトビー・ジョーンズ!『裏切りのサーカス』以来のファンですが、今回は本当に良かったな。抜け目ない商人だけどプライドが高く、一方でクッキーを美味しそうに食べる小人物という感じなんだけど、それでいて後半の残酷さが光る。堪能しました。