純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

この映画を千切って捨てたい。『PERFECT DAYS』

f:id:is_jenga:20231229115558j:image

 淡々と日々を生きる役所広司が年老いたジョン・ウィックみたいだった。映画としては予想通りというか、正直かなり嫌いだったけど写真を千切りまくるシーンだけはカッコよかった。渋谷の大学に日々通っていた自分としてはなんだかプロパガンダじみた東京映画で居心地が悪かった。

 田中泯の使い方とか、役所広司の上を見上げる仕草や表情や高速道路を流れる車から自転車に乗り換えてふわふわと軽快に川を渡っていくところとか、素晴らしいと思いつつこんな素晴らしい人たち(まるで妖精とか天使のよう)が棲みついている、守られている東京という構図がやっぱりグロテスクだと思った。東京のトイレはもっと汚いし、吐瀉物に塗れていたりしするし、ホームレスは最近だって渋谷区が公園を強制封鎖して排除しようとしていたし、映画の中にはオシャレでアーティスティックなトイレしか出てこない。こんな都合のいい東京を切り取ってしまうのは悲しい。

 あと他のところでも言われていたけど主人公が普段鍵をかけない人なのに、あの姪との別れの場面で突然鍵がかかってて違和感しかないし(最初は形式的に合鍵を渡したのかと思った)、エピソード的にはとても好きだった柄本時生の彼女アオイヤマダと最後カセットテープを聞いた後のあの不意のキスは何だったのだろう。不可解すぎるしノイズでしかなかった。美しい映画を撮れる人がこういう作品に協力してしまっているのがとても残念。