純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

過去そのもののアイツ『佐々木、イン、マイマイン』

 新宿武蔵野館で映画を見るたびに、予告編の「佐々木!佐々木!佐々木!」コールと全裸踊りを見させられて、正直辟易していたが、食わず嫌いをせずに済んでよかった。大傑作。ここまで自分に刺さってしまった青春映画は『桐島』以来かもしれない。

 見ていて自分の人生の「佐々木」的存在に思いを馳せる……ということを色んな人がするのだろうが、自分は自分の人生で何人もの佐々木に出会っていたし、彼らの背中を追いかけていたんだと思い出した。そして何人もの友人の消息を知らない。「昔面白かったアイツ」、つまりは佐々木は過去そのものなのだ。それを妥協なく表現しようとした役者陣、そして美術!(とにかく佐々木の家のリアリティよ!俺行ったことある!とすら思った)にすごい熱量を感じた。

 ただやっぱり、学生の仲間うちの居心地の良さって多分にホモソーシャル的な閉じた感じがあって、この映画全体で女性へのまなざしの関心のなさが強く出てしまっているとも思った。真摯に女性に接していた(「オンナ」とかいう概念ではなく)のはむしろ佐々木ただ一人かも知れない。

 でも中学校とか、めちゃくちゃ貧乏な友達の家とか、親が帰ってきて気まずいとか、誰かの父親が死んだとか、そういう自分たちにはどうしようもない出来事って見えないようでいて見えていた。あれほどの「イイ奴」はいなかったかもしれないが、だからこそ佐々木がモーニング!って教室来る時びっくりして泣いてしまった。感想がどんどん「佐々木のいた過去」にフォーカスしていってしまう……「美術部の時の金澤の思い出」とか書こうとしてたのに……やっぱりいい映画だと思うんだ。