純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

ターセルス・ミルーリア・ダ・パーゴ……『王様戦隊キングオージャー』

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 『王様戦隊キングオージャー』、完走してしまったよ……去年のドンブラザーズから戦隊見始めた者としては超王道のエモさとアツさの塊みたいな作劇に並走していくような50話だった。日本の特撮ドラマで本当にMCUのエンドゲームみたいな終盤の決戦を作り上げたことは偉業と言うしかない。エンドゲームから進撃の巨人NARUTOの忍界大戦、そしてグレンラガン規模の変形まで日本のサブカルチャーの"熱さ"を凝縮したかのような最終盤だった。

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 一番好きなキャラクターはなんと言ってもシオカラです。序盤からずっと好きだったけど、実質のシオカラ回と言っていい35話はこんなシオカラが見たかったポイント3000点でした。王様達の中ではやっぱりリタが素晴らしい。最初の数話でグッときたのはリタの存在があったからで、ドンブラザーズの鬼頭はるかも女性キャラクターの枠に嵌らない存在ではあったけど、戦隊シリーズの中でここまで明確にジェンダーを明示しない中性的な、ノンバイナリー的ですらあるキャラクターを描いたというのは素晴らしいことだと思う。かなり王道的な「燃える」展開がありつつ、こうした先進的な取り組みを随所に入れ込んでいる、というのがやっぱりキングオージャーのすごいところだったと思う。

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 あと後半のフックとなるラクレス王の描き方もかなり凄かった。現代社会において王様や王国という極めて家父長的な社会を肯定しかねないものを、物語の伏線として機能させつつ複雑な機微を持って描く、という点において彼やジェラミーなどの負の歴史を抱えた国の王(そしてなんと言ってもデズナラク8世!)を物語の根幹において「起動」させていく後半の筆致は本当にすごいものを見ているな……という気持ちになった。エイリアンオマージュのデザインがカッコいい宇蟲王ダグデドもかなり帝国主義植民地主義的な問題意識の上に置かれていて、何重にも重厚な「大きな物語」を描いてみせた大作だったと思う。ドンブラザーズのある種の内面的な作劇から転じてこれが出てくる、という戦隊シリーズの豊かさを実感した。

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 あ、あと、ネフィラ様超カッコよかったね……『シン・仮面ライダー』のクモオーグに続いてクモ怪人というものはなんとも(自分にとって)官能的で強靭な存在であるのだなとしみじみしてしまった。