純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

死と闘争のその先へ。『鎌倉殿の13人』

 2022年のドラマは、この『鎌倉殿の13人』と『ベター・コール・ソウル』がぶっちぎりでナンバーワン。これはそのまま人生ベスト級の国内/海外ドラマです。最終回はリアタイして、あまりにも熱中した一年が終わってしまって呆然となってしまい感想が書けないままだった。

 しかし死と権力の物語の果てにこんなラストが待っていようとは。三谷幸喜自身が言及していた『ブレイキング・バッド』はもう超えていたと思う。本当に日本版『ゲーム・オブ・スローンズ』とでもいうべき権力と愛が錯綜する大長編ドラマだった。最初にこれとBCSが人生ベストと書いたけれど、この二作が到達したフィナーレがどちらも生き残りをかけたパワーゲームに苦しみ、染まって行った男性主人公を看取る女性の眼差しで閉じられたことは、どこか象徴的だけど納得のいくラストシーンだった。政子とキム、この二人を想う2022年だったと言っても過言ではない。

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 あまりにも好きになってしまった作品に対しては言葉が出てこないものなんだな……NHKで特番をやった時に出てきた「鎌倉幕府の犠牲になってきた人一覧」の表がそのままこれまでの名場面集のように見えてくる恐ろしさ、しかしそこで描かれていた残酷と悔恨のドラマは後半に進むにつれてその刃が北条家自身に向き、果てには義時へと至る。権力と排除の暴力を追体験する一年、こんなドラマ体験はもう二度とできないかもしれない。

 一番好きな人物は、悔しいけれど三浦義村を演じた山本耕史だろうか。自分の中では小学生の時に見た三谷幸喜大河『新撰組!』の「鬼の副長」土方歳三が今でも忘れられないのだが、『シン・ウルトラマン』が去年公開され、そこで演じたメフィラス星人ともどこか重なる憎めない不穏さが完璧でした。それだけに最終回のオチはもうびっくりで、本当に脚本家の手のひらの上にいるような気持ちがした。悔しい。(それはそれとして最終回直前にライブ配信されたグランドフィナーレで「誰が言った!」と繰り返してた山本耕史、はしゃぎすぎだよ!)

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 年始に放送された『100分deフェミニズム』(2月に再放送が決まったみたいでめでたい)で鴻巣友季子さんが『鎌倉殿』の三浦義村ホモソーシャルな存在としての描かれ方を語っていたのも印象的だった。たしかに「頼朝の女を嫁にして、俺は頼朝を超える!」とか言ってたしなぁ。ああ、あとクィアな存在として描かれた実朝像も素晴らしかった(太宰治『右大臣実朝』、そろそろ読もうな……)。三谷幸喜坂元裕二宮藤官九郎などの往年の脚本家が価値観をどんどんアップデートさせているのを観れるのは本当に嬉しいことだと思う。結局だらだらとオチもなく書いてしまったが、本当に大好きな作品です。