純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

Running on Karma『マッスルモンク』

 中盤まではゲラゲラ笑いながら楽しく観ていたのだが、終盤の転調と主人公の運命、映画全体のテーマの提示があまりにも重くて、物凄い読後感だった。何も言えなくなってしまうような。何しろ英題は『Running on Karma』なのだ。

 前半は肉襦袢を着たアンディ・ラウの超人アクションが楽しく、それこそアメコミ映画みたいな複数の悪役が出てきてそれを退治、改心させるような勧善懲悪展開が楽しいが、それすらも後半へのフックになっている。いやちょっと、ここまで深刻に仏教思想(とくに「因果応報」)と向き合った映画はなかなか観ない。常に国際的なアイデンティティを問うてきた香港映画だから、そしてジョニー・トーとワイ・カーファイだからこそ描けた内容だと思う。このコンビが続いて『MAD探偵』を制作していることが非常に腑に落ちる。

 ギャグの連発、ヒーロー映画としての側面、そしてそれを脱構築するかのような東洋的解釈と、観ていてすごい連想したのはチャウ・シンチーの『チャイニーズ・オデッセイ』二作(完全に前編後編で制作されているのでセットで観た)。あれもずっと笑って観ていたのに最後はめちゃくちゃ泣かされてしまった。やっぱり香港映画をもっと観ていきたい。昔『バーフバリ』のタイミングでインド映画にハマり、『PK』という本当に大切な作品に出会うことができた。これからはゆっくりと香港映画の旅に出ようと思う。