純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

縮こまった肉体に隠された欲望。『Saltburn』

f:id:is_jenga:20240223200942j:image 今年観た中で最もエキサイティングで最も面白い……お手本のようなパリー・コーガンの使い方。2時間を通して熱が迸っていくようだった。ロザムンド・パイク繋がりで『ゴーン・ガール』くらい面白いと言えば伝わるだろうか。

 バリー・コーガンはもちろん演技やその表情はもう観ていて全く飽きることがないのだが、今回改めてあの「体育座りみたいな縮こまった姿勢」になった時のインパクトの強さを再認識した。肉体が弛緩していたり縮こまっていたりする時に彼が演じる人物は何か非常な企みを抱いていたり頑なに防御姿勢を取っていたりする。彼が何かを隠し持っている人物を演じることが多い(もしくはそのように見えてしまう振る舞いが劇中においてもたまらなく魅力的に映る)のはその肉体のせいだったのかもしれないと思った。『聖なる鹿殺し』のパスタ食べる時の姿勢とか忘れられないもん。

 そして今作でバリー・コーガンが見せる抱擁とキスは、それが到達しない相手だからこそ、無機物に自分の肉体を磔にするような痛々しさと切実さがあいまって胸を打つ場面だった。下手したら今まで観たなかで一番好きなバリー・コーガンだったかもしれない。

 ちょっとだけ後半の展開に触れるけど、ヘレディタリーや家族ゲームなど、映画でしか見ることのできないものの一つに「最悪な状況で行われる家族団欒の食事シーン」というものがあるが、今作のそれはその中でも最高峰と言っていいものだった。大満足です。

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