純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

死に向かって飛べ。『キャシアン・アンドー』

 もう、スター・ウォーズ史上最高傑作と言っていいと思う。長編ドラマであること(後半シーズンは2年後)、スピンオフ作品のさらなる前日譚であること、主人公格が複数人いるような群像劇であること、全てが有機的に組み合わさって凄まじいカタルシスをもたらしている。何よりも評価したいのがこの物語展開の「遅さ」で、無数の名もなき反乱者たちを描くということを体現している構成だと思う。

 そして何より自分は前作で「死」が定まっている前日譚にめっぽう弱いのだ。Twitterの感想でもSW版『ベター・コール・ソウル』と言われていたが、自分にとってはSW版RDR2でもある。いわばほとんどの人物が自分の死に向かって活動している。ステラン・スカルスガルド演じる反乱軍のフィクサーは「自分は見ない夜明けのために命を燃やす」という。これは主人公のアンドーでさえそうだ。これは前日譚ドラマでしかできないことでありながら、同時にすべての始まりであるエピソードIVの物語の厚みをさらに増していくというすごい離れ業だと思う。

 いやもうすべての俳優が素晴らしい演技をしているのだが、その中でもあえて選ぶなら自分はもうアンディ・サーキス演じるキノ・ロイにとにかくやられた。サーキスのベストアクトのひとつと言っていいと思う。アンドー刑務所編は3話使うには長いという人もいたが、自分はあの3話が一番好きだ。『THX 1138』みたいな真っ白な刑務所の合理的な美しさが本当に残酷だし、あの人権を損害される社会というのは自分達のすぐそばにあると思う。アンディ・サーキスの最後の表情は一生忘れないだろう。東京コミコン羨ましかったなぁ。もう褒めるところだらけなんだけど、長くなってしまうので、最後にあの赤いドロイド「B2EMO」もめちゃくちゃ表情豊かで素晴らしかった。最終話だったかな、あのB2EMOの美しいカメラ/瞳から始まるショットがあって痺れた。