純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

カメラはどこにあるのか。『モンスターズ/地球外生命体』

f:id:is_jenga:20231021123408j:image モンスター襲来から6年後という設定が同じく低予算SF映画第9地区』を思わせる。地球外生命体が武力によって隔離されているというのも通じるところがあるし、合わせ鏡のように観ても面白いかも。そう考えると両監督がいまこのタイミングでストレートなSFエンタメ新作を撮ってるのも喜ばしい。

 前情報を何も入れてなかったので舞台がメキシコというのも結構驚きで(勝手に『トロール・ハンター』みたいなやつと思ったら『第九地区』だったという印象)、わりと社会派というか植民地支配や南北問題というテーマがかなりわかりやすく「モンスター」に投影されている。モンスターよりそれを押さえ込もうとする米軍の爆撃でメキシコの人々が死んでいる。一方で独特の味わいもあって、ひょんなことから危険すぎるバックパッカー旅をすることになった二人の雰囲気には、モンスターの怖さの前に異国旅行の怖さと楽しさがあって、なんだか大学生のころの無謀なアジア旅行とかを思い出したりもした(いま公開してるギャレス・エドワーズ監督の新作は近未来のアジアが描かれる)。

 話は逸れるが、ちょっと前にTwitterで話題になってた『シン・ゴジラ』とKOMのCGの違いについての動画、『パシフィック・リム』とその続編も比較して「カメラが地に足ついてるかどうかのリアリティラインの違い」って話だったけど、これ自分がギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』一作目が妙に好きだった理由も近いものがあるかも。

アメリカは外からだと違って見える」
 この一言に作品のテーマがわざとらしくなく凝縮しているし、遺跡で一晩明かした後の朝に現れる途中で切れたハイウェイの鮮烈さは素晴らしかった。未知の世界へのセンスオブワンダーがたしかにそこにある。その後のラストのエピソードは流石にこんなオチだとは思わなかったぜ!って気もするけど総じてすごく面白かった。『第9地区』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』などに並ぶ、SFジャンル映画監督の輝かしき第一作だ。

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