純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

氷の世界に揺蕩う。『バーナデット ママは行方不明』

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 もしかしたらリンクレイター監督作品で一番好きかもしれない。メンタルヘルスと家族(そして建築!)の話だと思っていたが、あの土砂降りを機に映画がどんどん未開の大地へと転がっていく。間違いなく人生で一番好きな南極映画。小学生の頃の将来の夢が南極に行くことだったのを思い出す。今年一番美しいエンドロールだと思った。あんなものを見せられたら在りし日の科学少年は泣いてしまう。

 真っ白な氷の世界に向かうまでのシアトルでも、どこか退廃的な美に満ちたショットの数々に撃ち抜かれた。そしてエンドロールに登場するあのカッコ良すぎる南極建築、”ハリー第6基地” っていうのか!!あの建築のもつ美しさと合理性とユーモアに号泣してしまったし、ここにソフトランディングする『バーナデット』の物語を語りおおせてしまったリンクレイター監督の手腕に感動した。マジですごい映画だ。芸術家の苦しみについての映画であり、とっても夢のあるSF冒険映画でもある。それって建築家とIT発明家の血を引いた子どもみたい。ナレーションが彼女であるのもラストシーンに響くナイスな仕掛けだ。

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 やっぱり思い出してしまうのは『宇宙よりも遠い場所』だな。どちらも現実世界で南極ってどうやっていくんだ?という問いをしっかりやってくれるのが良い。観光であって観光ではなく、人生における極点となってしまったその境界を飛躍するところに強く感動する。自分はこの映画を観ていつか絶対南極に行くぞ!と決意したし、わりと本当に今年ベストまであるかもしれない。あとバーナデットも「よりもい」もわりとペンギンの扱いが雑というか、その辺に無造作にいて警戒心よりも好奇心ですぐ近づいてくる隣人みたいな扱いだったのも共通点かも。はやく南極行きたい。

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