純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

旧作映画

記憶を再生する。『ミツバチのささやき』

ビクトル・エリセ監督が31年ぶりに新作を撮ったというので、その前に見返しておこうと思って観た……のだが、映画を観ることは記憶を失ない、忘れていたことを発見することだという体験にまたしても愕然とした(映画と記憶の話は『牯嶺街少年殺人事件』のパンフ…

女二人でぴょんぴょん跳ねる。『麦秋』

久々に小津の『麦秋』を観たが、こんなに面白かったっけ……もともと好きだけどちょっとびっくりするほどずっと面白い。小津映画はマジでスルメというか、この前東京国際映画祭で久しぶりに観た『お早よう』とかも信じられないほど面白くてず〜っと笑顔になっ…

現実と見分けがつかない。『ラルジャン』

ラルジャン ロベール・ブレッソン 《スペシャル・プライス》 Blu-ray クリスチャン・パティ Amazon ロベール・ブレッソンは去年劇場で『たぶん悪魔が』と『湖のランスロ』を観たきりだった。どちらも凄かったが、同時にこの映画をどう観ればいいのだろうと思…

観客の視線を唆す「手」。ロベール・ブレッソン『スリ』

『ラルジャン』に続いて『スリ』を観た。ロベール・ブレッソンが「手」を撮る映画作家だというのはよくわかった。「うかつだった」と言いながらも刑事に近づいていったりする主人公、ナレーションが自分の行為に常に被さってくる感じもかなりフィンチャーの…

カメラはどこにあるのか。『モンスターズ/地球外生命体』

モンスター襲来から6年後という設定が同じく低予算SF映画『第9地区』を思わせる。地球外生命体が武力によって隔離されているというのも通じるところがあるし、合わせ鏡のように観ても面白いかも。そう考えると両監督がいまこのタイミングでストレートなSFエ…

キム・テリの視線の先に。『1987、ある闘いの真実』

女の子のパートが異常にいい。「それで世界が変わるの?」 デモに行く友人を心配する大学生の心情が、恋愛や青春よりも不安に押しつぶされている日常が伝わってくる。独裁政権は実際にソウル大の学生を拷問して殺してしまったが、それと同時に日常を生きる人…

ベルリンに響き渡る破裂音。『アル中女の肖像』

ユーロスペースの「ウルリケ・オッティンガー ベルリン三部作」特集上映で観た。今年一番すごい映画かもしれない。ていうか酒に酔ったことがある人は全員観てくれ(たぶんもう上映は終わってるけど……)。個人的に忙しい期間でこの一本しか観れなかったことを強…

死の花畑とグラウンドの便所『3-4X10月』

『その男、凶暴につき』に続いて新文芸坐で鑑賞。『その男、』とのギャップというか温度差というか、北野武のフィルモグラフィーが暴力とユーモアに彩られているように、その作品群の豊かな混沌を一作に詰め込んだような作品だった。最後のオチはいわゆる「…

死に向かってズカズカ歩く『その男、凶暴につき』

ずっと観たかった作品で、ちょうど新文芸坐で上映されると言うことで観に行った。自分は北野武監督作品は中学生の頃に『アウトレイジ』を観たのが最初で、そこから遡っていったのだが(いまでも一番好きなのは『アウトレイジ ビヨンド』)、監督第一作はまだ観…

暖かな日差しの荒野を滑る『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』

昨日は青山真治の一周忌企画『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を観てきました。劇場で観るのも二回目だしDVDも持ってるのに、こういうタイミングで観るとガラリと印象が変わった。パンデミックと音楽という突飛なSF設定や爆音の演奏シーンよりも、もっとやさ…