久々に小津の『麦秋』を観たが、こんなに面白かったっけ……もともと好きだけどちょっとびっくりするほどずっと面白い。小津映画はマジでスルメというか、この前東京国際映画祭で久しぶりに観た『お早よう』とかも信じられないほど面白くてず〜っと笑顔になっちゃったのを思い出す。
四人でお紅茶飲みながら女子会するシーンとか、もともとすごい好きだったんだけど、改めて見直しても最高だな……あの椅子を変える場面のリズム感というか、言ってしまえば躍動感がすごいんだよな。軽やか。『麦秋』のケーキの場面もいま見返すと本当にスリリングですごい。様々な目線がケーキ(とそれを買ってきた紀子)に投げ掛けられて、紀子はそれを掻い潜ってケーキを切り、食卓に運び、口に運ばなくてはいけない。しかしあくまでも、紀子はそれを用意する人であろうとする。
『麦秋』、最後の家族写真の印象が強いけど久しぶりに見返してみると女性が二人で会話をする場面が何度も繰り返され、それがどんどん物語を進めていく(もっと言えば"別の物語"に変化させていく)のが嬉しくなるような作品だった。原節子がどんな視線に対しても原節子であるというのはすごいと思う。