純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

ベルリンに響き渡る破裂音。『アル中女の肖像』

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 ユーロスペースの「ウルリケ・オッティンガー ベルリン三部作」特集上映で観た。今年一番すごい映画かもしれない。ていうか酒に酔ったことがある人は全員観てくれ(たぶんもう上映は終わってるけど……)。個人的に忙しい期間でこの一本しか観れなかったことを強く後悔している。

 いやもう、ちょっと言葉にならない映画です。女達が酒を飲む、グラスが割れる、踊り出す……路上に倒れる、誰かがやってきて、また酒が見つかる……本当に観ているだけで身体が熱くなって、覚めていることも酔っていることも変わらないのだと思う。アニメだとイクニ監督作品を観ているような、バキバキにキマった画面で美しい女達が酒を飲み干す、そこに言いようのない自由を感じるし、退廃も感じるし、やっぱり現状への抵抗の意思(これこそが「ニュー・ジャーマン・シネマ」!)を強く感じる。文学でいえば無頼派だ。坂口安吾石川淳だ。

 とにかく『アル中女の肖像』はすごい……去年の『王女メディア』みたいな、最初から最後まで主演の女性が魔的な魅力に満ちている、というか世界を支配している。いつか語りましょう、ここまで破茶滅茶な映画もなかなかないよ。最後のシーンの色とりどりのガラスを踏み砕くハイヒールが忘れられねぇんだ。