純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

感想が書けない。鬼頭莫宏『なるたる』

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 鬼頭莫宏なるたる』を読み終わった。中学生の頃初めて『エヴァ』を観た時のような、自分が触れたことない精密で奇妙でもしかしたらとても恐ろしいもの、そんなフィクションに触れた感覚になる。展開や設定がわからないというより、この作品を受信するチャンネルを自分が持っていないような気持ち。

 この感覚はチャネリング的な『なるたる』の子供たちと超常的な「竜」や「星」が繋がっていくという世界観にも通じていて、やっぱり平成日本の不安の底を攫うような感覚があるんじゃないかと思う。これはアメリカ軍がいる戦後日本でもあり、「核」のイメージも『AKIRA』の先にある不安という気がする。

 正直後半はその「残酷さ」に恐れ慄いて読んでいたが、須藤くんの選択を見るにつれ人類の不安が星を覆い尽くす時に子供たちは何を選ぶのかという、日本的なSFの極点のような作品だった。『ぼくらの』よりも劇薬だと思うが、一巻から十二巻の表紙の落差を体験した自分はやっぱり『なるたる』を選びたい。

 『なるたる』を勧めてくれた友人はここ数年で『輪るピングドラム』『ベルセルク』『はだしのゲン』『ファンタジスタドール』『ACE COMBAT』『Bloodborne』など未知の惑星を踏破するようなフィクション体験を教えてくれた。続けて鬼頭莫宏さんの『殻都市の夢』『終わりと始まりのマイルス』を読みます。