純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

2023-01-01から1年間の記事一覧

この本があることがSFである。『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン: 実績・省察・評価・総括』

昨日は株式会社カラー『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン: 実績・省察・評価・総括』を読みました。結構厚いなーと思っていたのにどこかSF作品世界の内部文書を読んでいるような奇妙なフィクション感があり(内容は極めてデータ主義の事実の評価で構成さ…

凄まじき寂寥。いしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』『花の雨が降る ROCAエピソード集』

眠れないのでいしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』を読んだ。止まらなくなって一気読みした。もう眠れない。いしいひさいちのいつものゆるゆるギャグ四コマで進んでいく二人の女子高生の日常がどんどん飛躍し、離れ離れになり、ラストの切なさ…

あっけからんとした文章と戸惑い。金川晋吾『いなくなっていない父』

金川晋吾『いなくなっていない父』成田空港までに読みおわった!いま読むべくして出会った本な気がする。この本を読む確固たる理由はないままに(そしてそういう曖昧さに負けてよく読みかけの本を積んでしまう)、ただ気になるから読むというのができた。電車…

えがくとつながる。黒田硫黄『ころぶところがる』

日雇いの帰りの電車で黒田硫黄の『ころぶところがる』を読みました。『茄子』以来のファンとしてはここにたやすく黒田硫黄の老境を見てしまいかねない。細野晴臣が『HOSONO HOUSE』からほぼ半世紀後に『HOCHONO HOUSE』を作ったように、この増殖し結合する黒…

ウド・キアもウィレム・デフォーもあることを心得よ。『キングダム』I&II、『キングダム エクソダス』

ヒューマントラスト渋谷で15時間超えの『キングダム』I&IIと『キングダム エクソダス』一気見上映で鑑賞。夢と現実が混濁している可能性があります。善も悪もあることを心得よ。 今年これを超える映像体験があるのだろうか。流石に15時間を一日で観るのは体…

タイBLは世界のはじまり。『2gether』『Still 2gether』

とっても楽しかった!全員かわいい〜〜 きゃあきゃあ言いながら一気に観てしまったので感想書くの困るな。最初の数話は想像よりもはるかにテンポが良くて、観ようか迷っている人は1〜2話見るだけでもかなり引っ張っていかれちゃうんじゃないだろうか。僕は序…

死の花畑とグラウンドの便所『3-4X10月』

『その男、凶暴につき』に続いて新文芸坐で鑑賞。『その男、』とのギャップというか温度差というか、北野武のフィルモグラフィーが暴力とユーモアに彩られているように、その作品群の豊かな混沌を一作に詰め込んだような作品だった。最後のオチはいわゆる「…

死に向かってズカズカ歩く『その男、凶暴につき』

ずっと観たかった作品で、ちょうど新文芸坐で上映されると言うことで観に行った。自分は北野武監督作品は中学生の頃に『アウトレイジ』を観たのが最初で、そこから遡っていったのだが(いまでも一番好きなのは『アウトレイジ ビヨンド』)、監督第一作はまだ観…

物語は誰のものか? 『小説家の映画』

とってもとっても良かった。日雇い早上がりしてそのまま映画館に行って、最初の20分くらい爆睡しちゃったけどすごい好きだった。ホン・サンスはずっと気になっていた監督で『逃げた女』とあともう一本くらいみた覚えがあるけど掴みどころがなくて、でもそれ…

一年間彼らと過ごすこと。『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』

人生初の戦隊シリーズ完走が『ドンブラザーズ』で本当に良かった。あまりにも評判がいいので、放送も折り返した昨年末から見始めて(たまたま友人の家に泊まった後の日曜の朝にクリスマス回の41話「サンタくろうする」を見て大爆笑して見始めた)、完走する…

"略奪の季節"『アトランタ』S2

『アトランタ』、随分間を空けてしまったけどシーズン2見始めた。相変わらずヴァンの台詞がいい。「"はじめまして"と言うべきだかーー俺は"時間"という概念を信じない。すでに仲間だ」この何言ってるんだコイツ……感というか、アブなすぎて逆に極めて明確な自…

微細な攻撃『アメリカン・ボーン・チャイニーズ 僕らの西遊記』

休日に久しぶりに海外ドラマ観るか〜とDisney Plusで一話再生したら面白くて一気見してしまった。今見るべきドラマだし、今見れてよかった。『シャン・チー』『私ときどきレッサーパンダ』『エブエブ』に連なる、アメリカに生きるアジア系の若者たち、家族た…

読むたびに本を閉じて溜息をつく。よしながふみ『大奥』

ゆっくりと噛み締めるようにしか読めない『大奥』、17巻まで来た。時代は第二次長州征討。ここまで読んできて『大奥』は大体三部構成になっていたと思うのだが、その末尾を飾るであろう最愛の二人が徳川家茂と和宮。最後にこんなクィアな、ケアする愛が待っ…

暖かな日差しの荒野を滑る『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』

昨日は青山真治の一周忌企画『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を観てきました。劇場で観るのも二回目だしDVDも持ってるのに、こういうタイミングで観るとガラリと印象が変わった。パンデミックと音楽という突飛なSF設定や爆音の演奏シーンよりも、もっとやさ…

このタイトルが大好き。『シャン・チー テン・リングスの伝説』

『ロキ』あたりからマーベルもういいかな……の気分になっていたのだが、もうこれで吹っ飛んだ。単独一作目では一番好き(あ、でもガーディアンズは)。『カンフー・ハッスル』丸出しなアクションも素晴らしいが、やっぱりバスの場面のパルクールと功夫を組み…

キー・ホイ・クァンに泣く。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

なぜか観ている途中で三回くらい泣いてしまった。『シャン・チー』も泣いたけど俺はとにかくカンフーに弱い。よく言われているけどたしかにクレヨンしんちゃんと同じエナジーを感じる。故に泣いてしまうんだよ……カンフーは滑稽だしカッコいいし自由だ。あの…

ウテナであってウテナでない『水星の魔女』

人生で初めてガンダムをリアルタイムで追うことができて、本当に充実した数ヶ月を過ごすことができた。ウテナも大好きだし、『ガンダム』というコンテンツでこんなに新しい物語が紡げるのかという感動があった。一方で女の子二人のエンパワメント(完璧すぎる…

死と闘争のその先へ。『鎌倉殿の13人』

2022年のドラマは、この『鎌倉殿の13人』と『ベター・コール・ソウル』がぶっちぎりでナンバーワン。これはそのまま人生ベスト級の国内/海外ドラマです。最終回はリアタイして、あまりにも熱中した一年が終わってしまって呆然となってしまい感想が書けないま…