純粋なのは不死ばかり

文を隠すなら森。

潮風は長編漫画の夢を見るか? ――阿部共実と施川ユウキと黒田硫黄の〈海〉、そして無風状態――

後輩が阿部共実さんの漫画『潮が舞い子が舞い』の同人誌を作って冬コミに出すというので、評論だかエッセイだかわからない13000字の駄文を寄稿しました。話したいことは全部書いた。まだ完成してませんが、「コミックマーケット103 日曜日(12/30) 東地区 “ノ…

さいたま国際芸術祭2023に行ってきました。

さいたま国際芸術祭2023に行ってきました。 3年に一回やってるらしいけど全然認知してなかった。何もわからず一人でふらっと行ってみたけどすげー楽しかった。それぞれのアーティストの作品も面白いけど、何よりも今回の芸術祭のディレクションを務めたアー…

放浪の女騎士たち。『アソーカ』

『アソーカ』を完走した。最終話はちょっと泣いてしまった。 『アンドー』『マンダロリアン』に次ぐSWドラマの傑作。物語が進むほど中世騎士物語という趣が強くなっていくのもカッコよかった。女騎士たちの戦いと連帯。サビーヌ・レン、『反乱者たち』未履修…

失敗とお仕事。『ザ・キラー』

感無量……映画監督で一番好きなフィンチャーのこんなキレッキレの殺し屋映画が観れるなんて。ジョン・ウィックやイコライザーと重なるところもありながら「仕事への諦観」と「人生への執着」にやられた。ドライと情熱の狭間でターゲットに接近していくファス…

運命は変えられるが、やり直せない。『The Cosmic Wheel Sisterhood』

5時間ちょっとでクリア。ラストの選択はとて辛かった。代償や喪失についての物語だと最初に告げられるように、やり直しが効かないセーブシステムも迷いと選択を進んでいく主人公に強く共鳴する仕掛けになっていた。そして次々と現れる魔女たちがめちゃくちゃ…

旅を増幅する装置としての王国病院、テレビドラマ。多和田葉子『星に仄めかされて』

星に仄めかされて (講談社文庫) 作者:多和田 葉子 講談社 Amazon 多和田葉子『星に仄めかされて』を読んだ。 前作『地球にちりばめられて』はHirukoが旅をして様々な人々に出会う話だったけど、今作は言葉を失ったSusanooにみんなが会いに来る。コペンハーゲ…

一人でも多くの瞳を。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

ラスト、80歳のマーティン・スコセッシ監督の瞳にデヴィッド・バーンと同じ怒りを観た。歴史について考えている人にはぜひ観てほしい作品。こんな映画を観ることができたことに、今はただ感謝の気持ちで一杯です。原作読んでもう一回観に行きたい。 今年はス…

ねこまち、中華街行き

プラスチックの、温かくもなく冷たくもない人工的な窪みに頭を傾け、転がし、定位置を探す。地下鉄の長い座席の端っこを陣取り、頭がほのかに固定されると、自動的に身体がその滑らかなへこみに馴染んでいく。この時、壁に対して身体は車両の進行方向になけ…

渡辺謙と爆弾のかわいさ対決。『ザ・クリエイター/創造者』

久々に超ストレートなSF大作が観れると思い、朝イチのグラシネIMAXで観た。話はわりとアホっぽかったりAKIRA過ぎたりはするけど、期待してたシモン・ストーレンハーグ的なSF世界の構築は余す所なく観れたので大満足。AIと共存するニューアジアの方がメカはダ…

カメラはどこにあるのか。『モンスターズ/地球外生命体』

モンスター襲来から6年後という設定が同じく低予算SF映画『第9地区』を思わせる。地球外生命体が武力によって隔離されているというのも通じるところがあるし、合わせ鏡のように観ても面白いかも。そう考えると両監督がいまこのタイミングでストレートなSFエ…

最高の階段。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

何よりもまず忘れられないのは後半に登場する建物内での『ホットライン・マイアミ』完全再現ワンカット。ジョン・ウィックが二階に上がる(ステージに入る)階段の隅に隠れるところからゆっくりと浮き上がるカメラがやがて天井を超えた俯瞰視点に到達する。良…

太宰治の「右大臣実朝」を読んで、実朝の墓参りをしました。

太宰治全集〈6〉 (ちくま文庫) 作者:太宰 治 筑摩書房 Amazon 結局鎌倉旅行には全然間に合わなかったけど、太宰治の「右大臣実朝」を読みました。いやー面白いです。最初はなんで太宰が実朝を?という気持ちだったのだけれど、読んでるうちに太宰治特有の「…

韓国映画の到達点。『HUNT』

この映画に全てがある。 この映画のために自分は韓国映画を観てきたのだと思った。昨日の夜に『1987、ある闘いの真実』を観ていたのもとてもよかった。今年これを超える映画はないだろうと思う。 イ・ジョンジェを知ったのは『イカゲーム』からであり、そこ…

キム・テリの視線の先に。『1987、ある闘いの真実』

女の子のパートが異常にいい。「それで世界が変わるの?」 デモに行く友人を心配する大学生の心情が、恋愛や青春よりも不安に押しつぶされている日常が伝わってくる。独裁政権は実際にソウル大の学生を拷問して殺してしまったが、それと同時に日常を生きる人…

あまりにチルすぎて泣いてしまう。『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』

めちゃくちゃクィアでストリートでサイバーパンク!アクションシーンがチル過ぎて最高。音楽ネタ多くて、みんなでBTS口ずさむところとかジンときちゃったな。そしてもちろん最高にNINJA!巨大な敵にスケボーで立ち向かう辺りからずっと泣いてた。 エンドロー…

氷の世界に揺蕩う。『バーナデット ママは行方不明』

もしかしたらリンクレイター監督作品で一番好きかもしれない。メンタルヘルスと家族(そして建築!)の話だと思っていたが、あの土砂降りを機に映画がどんどん未開の大地へと転がっていく。間違いなく人生で一番好きな南極映画。小学生の頃の将来の夢が南極に…

ベルリンに響き渡る破裂音。『アル中女の肖像』

ユーロスペースの「ウルリケ・オッティンガー ベルリン三部作」特集上映で観た。今年一番すごい映画かもしれない。ていうか酒に酔ったことがある人は全員観てくれ(たぶんもう上映は終わってるけど……)。個人的に忙しい期間でこの一本しか観れなかったことを強…

言葉は風に吹き散らされて。阿部共実『潮が舞い子が舞い』

ついに、阿部共実『潮が舞い子が舞い』を読み終わった。心に突き刺さるものを見てしまった罪悪感が散りばめられたような最終巻だった。それはファミレスに置き忘れられた同級生のノートだったり銭湯あがりの「夜の私服女子」だったりするが、二人乗りの水木…

旅をしたら世界が散らかる。多和田葉子『地球にちりばめられて』

多和田葉子「地球にちりばめられて」、やっと読み終わった。大好きすぎる!!!多和田葉子は裏切らない。 ドイツやデンマークや南フランスを旅してHirukoがSusanooに出会う話のようではあるが、それが「ハッピーエンド」と呼ばれるような定められた「故郷を…

ケアに満ちた海賊たちの船出。Netflix版『ONE PIECE』

久しぶりに一気見するくらいは面白かった。荒唐無稽な少年漫画の実写化として(『カウボーイ・ビバップ』の反省も踏まえてか)、製作陣がめちゃくちゃ気合いを入れて強度を作ってきたところとそうでないところの差が激しく、これは限りある予算と尺を使ってド…

この本があることがSFである。『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン: 実績・省察・評価・総括』

昨日は株式会社カラー『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン: 実績・省察・評価・総括』を読みました。結構厚いなーと思っていたのにどこかSF作品世界の内部文書を読んでいるような奇妙なフィクション感があり(内容は極めてデータ主義の事実の評価で構成さ…

凄まじき寂寥。いしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』『花の雨が降る ROCAエピソード集』

眠れないのでいしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』を読んだ。止まらなくなって一気読みした。もう眠れない。いしいひさいちのいつものゆるゆるギャグ四コマで進んでいく二人の女子高生の日常がどんどん飛躍し、離れ離れになり、ラストの切なさ…

あっけからんとした文章と戸惑い。金川晋吾『いなくなっていない父』

金川晋吾『いなくなっていない父』成田空港までに読みおわった!いま読むべくして出会った本な気がする。この本を読む確固たる理由はないままに(そしてそういう曖昧さに負けてよく読みかけの本を積んでしまう)、ただ気になるから読むというのができた。電車…

えがくとつながる。黒田硫黄『ころぶところがる』

日雇いの帰りの電車で黒田硫黄の『ころぶところがる』を読みました。『茄子』以来のファンとしてはここにたやすく黒田硫黄の老境を見てしまいかねない。細野晴臣が『HOSONO HOUSE』からほぼ半世紀後に『HOCHONO HOUSE』を作ったように、この増殖し結合する黒…

ウド・キアもウィレム・デフォーもあることを心得よ。『キングダム』I&II、『キングダム エクソダス』

ヒューマントラスト渋谷で15時間超えの『キングダム』I&IIと『キングダム エクソダス』一気見上映で鑑賞。夢と現実が混濁している可能性があります。善も悪もあることを心得よ。 今年これを超える映像体験があるのだろうか。流石に15時間を一日で観るのは体…

タイBLは世界のはじまり。『2gether』『Still 2gether』

とっても楽しかった!全員かわいい〜〜 きゃあきゃあ言いながら一気に観てしまったので感想書くの困るな。最初の数話は想像よりもはるかにテンポが良くて、観ようか迷っている人は1〜2話見るだけでもかなり引っ張っていかれちゃうんじゃないだろうか。僕は序…

死の花畑とグラウンドの便所『3-4X10月』

『その男、凶暴につき』に続いて新文芸坐で鑑賞。『その男、』とのギャップというか温度差というか、北野武のフィルモグラフィーが暴力とユーモアに彩られているように、その作品群の豊かな混沌を一作に詰め込んだような作品だった。最後のオチはいわゆる「…

死に向かってズカズカ歩く『その男、凶暴につき』

ずっと観たかった作品で、ちょうど新文芸坐で上映されると言うことで観に行った。自分は北野武監督作品は中学生の頃に『アウトレイジ』を観たのが最初で、そこから遡っていったのだが(いまでも一番好きなのは『アウトレイジ ビヨンド』)、監督第一作はまだ観…

物語は誰のものか? 『小説家の映画』

とってもとっても良かった。日雇い早上がりしてそのまま映画館に行って、最初の20分くらい爆睡しちゃったけどすごい好きだった。ホン・サンスはずっと気になっていた監督で『逃げた女』とあともう一本くらいみた覚えがあるけど掴みどころがなくて、でもそれ…

一年間彼らと過ごすこと。『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』

人生初の戦隊シリーズ完走が『ドンブラザーズ』で本当に良かった。あまりにも評判がいいので、放送も折り返した昨年末から見始めて(たまたま友人の家に泊まった後の日曜の朝にクリスマス回の41話「サンタくろうする」を見て大爆笑して見始めた)、完走する…